冬季中部縦断作戦 ④
2007年 02月 20日
海浜公園を出発し、県道を黙々と北へ。流れはのんびりだが、まあ順調に進んでいる。
子一時間ほど走り続け、本日最初の目的地、「なぎさドライブウェイ」に到達。
ご存知の方も多いだろうが、千里浜と呼ばれる浜辺のうち3~4kmほどの区間のことで、砂が締まっているため、乗用車やバイクだけでなく、観光バスまでもが走行できる砂浜である。
98年のバイクツーリングで少しだけかじったことがあるが、今回はもちろん全線をしっかり堪能させていただく。
その始点に進入し、とりあえず停止。
土手の門をくぐりぬけた瞬間、ゴォッと風の音が。あまりに風圧が強く、ドアを開けにくかった。地面からは砂が舞い飛ぶ、というよりは地表を流れて行くようで、ある意味美しかった。
が…この強風は何とかならんものか? ビデオカメラを回すも、レンズキャップがレンズ付近で暴れるし、デジカメに至っては手がぶれてなかなか静止させることができない。
各種メディアで撮影を終え、改めて砂浜を見回す。荒波に打ち上げられたのか、あちこちにゴミが散乱している。
その中に、何やらビニールっぽい素材でできたおもちゃのようなものもあった。
これ、何のおもちゃだろ?
…!?!?
おもちゃではない。こ、これは…
魚!?
うわ~…
種類は何だろう? フグのようにも見えるが、この物騒なトゲは…えーとなんだっけ?
ハリセンボン?
かわいそうに、何らかの原因で命を落として、ここに打ち上げられたのだな。
ところが、哀れみつつ周囲をよく観察しているうちに、私の心情は「かわいそう」から「気味が悪い」へと変化していった。
ちょっと待て、これって…
みんなとまでは言わずとも、7~8割がたはハリセンボンの死骸ではないか。
一体どうしたというのだ?
地球温暖化に伴う怪奇現象か?
それとも、よくある出来事なのか?
―帰還後に少し調査してみたのだが、これはそれほど珍しい現象ではなく、むしろ冬の北陸の風物詩とも言えるらしい。
簡単に説明すると、ハリセンボンは本来、本州以南に生息する魚であるが、その群れの一部が夏ごろに対馬海流に乗って日本海を北上するらしい。
で、来たはいいが、冬になると当然水温は下がる。本来は熱帯・温帯に分布するハリセンボンはその冷たさに耐えられず死んでしまい、その死骸が日本海側の各地で浜に打ち上げられるそうである。この現象を「死滅回遊」といい、ハリセンボンのそれはまさに典型であるとか。
むろん、この時点においてそのような事情など知る由もなく、ただただ驚嘆に暮れる他なかった。
おもむろにしゃがみこみ、ケガをしない程度に恐る恐るつついてみる…
…反応がない。ただのしかばねのようだ。 (ドラクエ風)
ザオリクの呪文が使えるわけでもなく、死んでしまっているものは救いようが無いので、とりあえず合掌して立ち上がった。
ハリセンボンのことはひとまず置いといて、なぎさドライブウェイである。
(先の画像のタイヤ痕と比べてみそ)
おっと! 入り口でいつまで遊んでいるんだ?
そろそろ走ってみるか。
前半の区間は、他車がほとんどいないのをいいことに、左手にビデオカメラを構え、窓を開けつつ走ってみた。
BGMは意表を突いて(?)津軽三味線。雪景色ではないものの、荒涼とした冬の海には意外としっくりくる。
やがて左腕がつってきたので(笑)、砂浜のど真ん中に停止してビデオカメラをしまい、今度は走りに専念してみる。
ギアをどんどんシフトアップし、速度を上げる。1、2速で元気に加速するとわずかに空転気味であったが、4WDとスタッドレス(正確にはM&S=マッド&スノー)タイヤにより、安定した走りを見せていた。
60km/hくらいをキープしつつ、調子に乗ってスラローム。ステアリングをややクイックに操作すると、一瞬だけドリフト状態になったような気がした。おおー、楽しいなこれは!
しかし、何も考えずに飛ばせるかといえば、実はそうでもない。
コース上には、他車のほかにも障害物があった。
それは、先のハリセンボンと、あとはカラスやカモメなどの鳥たちである。
大型ブルドーザーが巨大なトンボのような道具で砂地をならしていて、それでゴミなどがある程度除去されていたのだが、それでもなおハリセンボンの死骸は残っていた。ならされていない部分は尚更である。
まあ踏んだからといってパンクするわけでもないが(自転車のタイヤならパンクするかも!?)、やはり気持ち悪いのでなるべくなら踏みたくない。それでも、あまりに数が多過ぎるため、いやがおうにも何匹かは踏み潰してしまったと思われる。
では、もう一方のカラスやカモメは、砂浜で何をしているのか?
鋭い方はピンときたかもしれない。
そう、彼らのお目当ては、ハリセンボンだ。
無数のトゲを身に纏ったハリセンボンが相手では、鋭いくちばしを持つ彼らとて手の打ちようがない。だが、車に轢かれたハリセンボンからは、無残にもその臓物が飛び出す(食事中の方、失礼!)。それを狙ってやってくるのである。
そんな光景を目にした私は、しみじみとつぶやいた。
「これが、自然の厳しさというものなのか―」
(何か違うような…?)
やがて、なぎさドライブウェイの終点が目前に迫ってきた。
シフトダウンして減速しつつ、ステアリングを右へ―
「!!!」
曲がらない!
向きは変わったが、そのまま滑る!
これって、4輪ドリフト状態!?
幸いすぐにトラクションが回復し、難なく出口をくぐっていくことができたが…
いやー焦った。
昨日の雪道よりも、こちらのほうがよっぽど滑るではないか。
ドキドキしながら、私はなぎさドライブウェイを後にした。
「ちょっとゆっくり遊びすぎたな、ペースを上げなければ」
(どこまでつづく?)
by fch_titans
| 2007-02-20 00:09
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