冬季中部縦断作戦 ①
2007年 02月 06日
なんとか9時までに名神に滑り込めた私とアレキサンドリア。そしてすぐの分岐で左に舵を取り、東海北陸自動車道へ。
雲ひとつない青空の下、アレキサンドリアは快調に北へ向かう。
しかしまあ、いい天気である。
冬将軍はどこまで撤退したのだろう? 実はもう日本海あたりまで引っ込んでしまってはいないだろうか?
そんなことを考えながら、車のあまりいない東海北陸道を気持ちよく航行してゆく。
それでも、トンネルをいくつもくぐって行くうちに、外気温は徐々に下がってきた。もっとも、バイクならそれを肌で痛感するところだが、今回は単に数字としてしか把握していない(少なくとも艦内にいる分には)。
そしてさらに進むと、道路脇の斜面や周囲の山々がうっすらと雪化粧をしているのを確認できた。だんだん「らしく」なってきたぞ。
美並I.C.から先は片側1車線となるため、ここがいつも渋滞ポイントとなる。
しかし、今日は金曜。流れが滞るようなことは全くないので、気にせず進行。
それと、事前にチェックした交通情報にあった、郡上八幡以北の「チェーン規制」は、あくまで普通タイヤ車限定であり、スタッドレス装着車は何ら問題ないようだ。ここで下ろされるつもりだったが、ラッキーとばかりさらに高速をひた走る。
そして通勤割の射程限界となる高鷲I.C.が近づいてきたところであった。
カーブの対向車線の路面上に、雪が! うむ、ついに来たか。
さらに進み、高鷲トンネルを抜けると―
いきなり路面を覆いつくす圧雪が現れた!!
本当にいきなりだったので、軽いパニックに陥ってしまった。
車を停めてチェーンを装着している人がそこかしこに見られた。
アレキサンドリアは大丈夫か?
あまりの恐怖に、自然とアクセルを緩めてしまう。
なのに後ろからは、現行エスティマがどんどん差を詰めてきて、ピタリと後方に付くし。
ば、バカモン、煽るな! こちとら怖いんだ!!
無理にペースを上げてクラッシュしてはひとたまりもないので、懸命に抑える。
そしてようやく高鷲I.C.に到達した。
なぜか出口へのループだけは2車線あったので、さっさとエスティマを先に行かせる。
うおぉーーー怖い怖い! カーブだカーブだ。
非常に慎重にゆっくりと曲がり、どうにか料金所を通過。
しかし、その後も見事なまでに圧雪路の連続。
しかも下り坂でカーブという、いじめに近い状況である。
心臓をバクバク言わせながら、2速エンブレでおっかなびっくり曲がる。
やがてR156に入り込むが、少し走ったところでたまらず道路脇の広大な駐車帯に緊急停泊。
とりあえず足元の雪にレモンシロップをかけ(!)、よーく考える。
チェーンはある。しかし、装着演習も行っていないし、そもそも問題なく装着できるかどうかさえ分からない。
しかし、想像を超えて見事に圧雪路ばかり。製造から3年目のピレリ・アイスストームの限界はまだよく分かっていないので、状況によっては、ひょっとして…!?
10分近くは悩んだだろうか。
私は決心した。
このままで行こう。
傍らを通過する車を観察したところ、チェーンを装着した車は意外と少ないことが判明した。それも、乗用車のみならず、バスやトラックまでもが、である。
みんな、スタッドレスだけであんなに速く走っている。
たぶん、大丈夫なのだろう。
ここはひとつ、アイスストームを信じてみよう!
再び操縦席に乗り込み、機関を始動。意を決して本線に飛び込んだ。
神経を尖らせてアレキサンドリアを走らせる。
しかし、5分、10分と時間が経つにつれ、恐怖心は少しずつ薄れていった。
瞬間的にハンドルを取られるシーンが何度かあったものの、決定的な破綻は訪れることがなかった。
そうか、スタッドレスというのは、かくも優れた性能を持っているのか。
いささか過小評価していたようだが、これでよ~く分かった。
しかし、調子に乗ってオーバースピードでコーナーに侵入すると必ず痛い目に遭いそうなので、あくまで40~50km/hの範囲を超えないよう、慎重に走って行った。
ひるがの高原の分水嶺を通過するころにはスノードライブにもだいぶ慣れ、写真を撮る余裕が
出てきた。
やがてアレキサンドリアは御母衣湖へ差し掛かった。
過去に通りかかったときはいずれもバイクで、季節は春と夏だけだったので、車で、ましてやこんな真冬に通るのは初めてである。実に感慨深いものだ。
その途中のとある橋を渡っていると、こんな光景が。
川の流れが谷底となった、雪の渓谷。
それは、私の目には「白いグランド・キャニオン」さながらに映った。
(本当は橋のまん中が最もいい眺めなのだが、ときおり乗用車やトラックが通るので、怖くて行けなかった…)
日差しを浴びて光る白銀の世界を堪能しつつ、艦を北に進めていたが、御母衣湖を半分ほど通過したところで、変化に気が付いた。
これまで澄んだ青空が広がっていたのに、行く先の空が、灰色に煙っている。
見るからに、雪雲だ。
冬将軍よ、まだいたのか…
そして、御母衣湖の北端にある御母衣ダムに差し掛かったころには、空はすっかり雲に覆われていた。
何度となく見てきた岩壁が、真っ白に染まっている。初めて見る光景にカメラを向けていると、空から雪が舞い降りてきた。
(つづく)
by fch_titans
| 2007-02-06 23:53
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