この星が、好きだから― 私は、ティターンズ。


by fch_titans
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それぞれの五平餅 (後編)



雨こそまだ落ちてはこないが、すっかり鉛色の空の下、窓を開けて一人のんびりと走る。
交通量の多いR151から、R257…には入らず、その手前の県道32号へと進入。そしてR420に出て西に5kmほど進むと、右手に目的地が見えてきた。


小さな社の隣に、水道の蛇口が何本も立ち並ぶ。ここは、「赤沢弁天の霊水」の水汲み場である。


ここに来るのは初めてではない。昨年、友人らとドライブした際、休憩がてら寄ったことがある。
で、今回、せっかく近くに寄るのなら、と作戦に組み入れた場所だ。


さっそく用意してきた4リットルペット×3本を手にして、まずは係りのオジサンに寄付(というか、ズバリ料金なのだが)を手渡す。1リットル当たり10円なので、計120円也。ま、コンビニで水を買うよりは断然安いので、いいだろう。


空間が残らないようにキッチリ入れて、キャップを締める。
途中、他に車が1台やって来て、降りてきたお姉さんが係のオジサンと話をしていた。小耳に挟んだ話では、碧南からわざわざ汲みにきたとか。何気にリピーターが多いのだろうか?


さて、追加任務をあっさり遂行し、帰還の途に付く。
もっと寄り道してもよさそうなものだが、今日は17時に両親が泊りがけで外出する。よって、私が犬の面倒を見なければならないので、早めに帰還せねばならない。


少し進んで、詳細なルート確認のために駐車帯にいったん停止。
すると、なんとウサギの亡き骸が横たわっていた。
人気の無い山の中なので、たぶん野兎だろう。野生のウサギは初めて見たが、ともかくその無残な姿を哀れみ、丁重に念仏を唱え、ふたたび発進した。
その直後に、今度は道の真ん中で、キツネが轢かれて死んでいた。私が轢いたわけではないけれど、この重厚で速い「凶器」を乗り回す人間達の中の一人として、申し訳なく思う。
両手は使えないので、片手をかざし、念仏を唱えた。


フロントウィンドウに、水滴が落ちてきた。降ってきたようだ。
午前は苦戦を強いられたが、やはりクルマで来て良かった。
そんなことを考えつつ、尚も西へとアレキサンドリアを進める。
スピードが落ちてきたのでギアを落とし、アクセルを踏む。加速して速度を取り戻す―
かと思いきや、意外に伸びない。気のせいかと思ったが、やはり気のせいではないような…!? 
メーターに視線を落とすと、何か違和感が…


あれ?
















タコの針が、0を指している!?




















エンジンストール…


前々回のブログにも書いたが、車検後、1回だけエンストしたことがあったのだが、ひょっとしてその再現か?


端に寄せて停止し、ハザードを点灯してイグニッションをいったんOFFにし、ひと呼吸置いて再始動。
エンジンは何事もなくかかった。
車検整備の際、どうも水温センサーの調子が悪い、と聞いていたので、原因はそこだろうか?
まあいい、また始動したので、何事もなかったかのように再び進軍。


それから何百mほど走ったろうか、アクセルペダルの踏み込みに反して、またもアレキサンドリアが失速してゆく。
案の定、タコの針は0を指していた。


「ど、どうしたんだ…?」
非常に嫌な予感がしてきた。


その予感は不幸にも的中し、その後は走ってはエンスト、走ってはエンストを繰り返した。
しかも最初はすぐに再始動できたのに、次第に時間を置かないと始動できないようになってきてしまった。


少し道幅が広くなっている区間に停泊し、サイドブレーキを引く。



























「アレキサンドリアよ、 

お前というヤツはなぜこうも…!」




雨が本降りになる中、こみ上げる怒りを必死に抑え、まずは現在地を確認してみる。
今、だいたいこのあたりのはずだ。


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えらいこっちゃ、こんな山の中で…
基地までは、まだ100km弱はある。
繰り返すが、基地では犬が待っている。だから、帰還が深夜に及ぶのは非常にまずい。
できるだけ急いで帰りたいが…


どうするべきか、私は考えた。そして、選択肢をまとめた。


①だましだまし走り続ける
これができるなら、それに越したことはない。ただし、このように走って停まって待ってを繰り返していては、帰還は何時になるやら…!?

②豊田あたりまでどうにか進み、どこか停めておける場所に乗り捨てて、今日のところは電車で帰る。
今日帰るという目的は達せられるものの、翌日以降が非常に厄介…

③おとなしく降参し、救援を要請。
これがもっとも無難だが、しかし、費用が恐ろしくかかりそう…


さんざん悩んだ結果、ダメもとで①を選択した。
で、停まってすぐに再発進してもまたすぐにストールを起こす傾向にあったので、はやる気持ちをグッと堪えて、30分ほど休止した。
もし、この長めの休止も功を奏さず、この後も頻繁にストールを繰り返すようなら、そのときは諦めよう。


本降りだった雨が少しずつ止んできたころ、再発進。
あまり回すと停まるような気がした私は、タコの針が2000rpmを超えないよう、超早めのシフトアップを敢行。
1km、2km、3km―
おおっ!? 止まらない! 順調に距離を稼いでいるぞ!
R420からR473、そして午前中に一瞬通ったポイントを通過し、R301をひたすら豊田方面へ。
そしてついに、東海環状の豊田松平ICへと到達!
これは行けそうだ、そう見積もった私は、ETCゲートをくぐり、一路基地を目指した。


上郷SAで休憩を入れ、ふたたび進軍を開始し、2、3kmは走ったろうか。


「!!!!」






















またキター!!!


急いでハザードを点灯し、路肩へとアレキサンドリアを寄せた。
こんなショックは、普段なかなか味わえない。
せっかく快走していたのに、突然エンジンが壊れてマシンがスローダウンし、怒りを顕わにするF1ドライバーの気持ちが分かったような気がした。
それこそ、両手を激しく振り上げたくなる気分だった。


今度は交通量のほとんどない山奥とは違い、すぐそばを多くの車が速い速度でかすめて行く環境なので、非常に悩んだ。
本来なら、とっとと救援を呼んで引っ張ってもらうのが正しい対処法であろう。
しかし、ムキになっていた私は、さらなる航行を試みた。


エンジンがかかり、発進しようにも後続の車がなかなか途絶えない。
何分も機を伺い、ようやく隙を見つけて本線へと踊り出た。
が! やはり2、3km進んだところで止まりやがる!!


そして、高速上での4回目のストール。三好ICを通過して、東郷PAまであと1km少々というところで路肩に寄せた私は、サイドブレーキレバーを引き上げ、イグニッションをOFFにすると、キーを抜いた。
「…もはや、これまでだ」
私は携帯電話を手にした。


辺りがだんだん暗くなる中、路肩の壁に寄りかかって座り、アレキサンドリアのハザードランプを眺めてぼんやりしていた。


原因に心当たりはあった。
繰り返し述べているように、車検時に不調と診断された、水温センサーではないかと。
処置はしてもらったが、交換したわけではなかった。その後、一度だけ調子が狂ったことがあった。
そして今日、峠で酷使したことで、あるいはダメージを与えてしまったのかもしれない。
もちろん、推測の域を出るものではないが。


それにしても、よく頑張ったと言えば、まあその通りだ。基地まではあと40km弱、初めに止まった地点から実に50km以上は走ってくれた。金銭的被害をかなり抑えることができた。


が…


九州遠征作戦では目的地到着と同時にクーラント漏れを起こし、神戸・宝塚作戦ではヘッドライト不点灯という不安を抱えつつ、両作戦ともどうにか基地まで持ってくれたが、今回は途中で力尽きる結果となってしまった。


思えば昨年の大晦日以来、コンスタントにトラブルが発生している。
壊れるたびにガックリし、それでも直ったときにはさらに愛情が深まる―
旧い車というものは、のそういうものだと思っていた。
しかし、これだけ頻繁に壊れてしまうようでは…


そんなことを考えていると、早くも救援の積載艦が到着した。
積載作業をお願いした私は、とても座り心地の悪い助手席へと乗り込んだ。


そんなこんなで20時ごろ、ようやく基地に帰還。
どうにかエンジンがかかり、定位置へと停泊。
そして艦内から重たい4リットル入りペットボトルを基地内に運び込む。
喜ぶ犬を散歩に連れ出し、帰ってきたところでさっそく汲んできた霊水を器に注ぎ、トレーに置いた。


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「さあ、飲みなさい。これで少しでも楽になればいいんだがな…」


さすがに疲れた私は、その後すぐに眠ってしまったが、午前2時ごろに目を覚まし、その晩に呑むつもりだったワインを「ヤケ酒」と称して口の中に流し込んだ。
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by fch_titans | 2006-09-25 22:29 | 作戦報告