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この星が、好きだから― 私は、ティターンズ。


by fch_titans
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北国の春を駆ける ④

15分ほど眠っただろうか。もっと眠っていたいが、それでは新潟に着くころには陽が沈んでしまう。とりあえず極限状態は脱したので、ふたたび走り出すことに。
ところがこの後、非っ常~に遅いクルマに行く手を阻まれる。
制限40km/hのところを、律儀に40、いや、もう少し遅いペースでのんびり走っている。ツイていないことに、ここも追い越し禁止。早く、早く先へ進みたいのに…うぐぐぐグググググォー…
その時だった。道路中央から黄線が消え、代わって白い破線が現れた。私は対向車線の安全を確認すると、ギアを一気に2段落とし、怨念のこもった右手でアクセルをワイドオープン! タコメーターの針は普段まず使わない4000回転以上まで跳ね上がり、巨大な機体は怒涛の加速を見せる。数台のクルマをごぼう抜きして、ミラーに映るそれらの姿を瞬く間に小さくしてしまった。フラストレーションの開放、というよりは、爆発だった。
「脅かして済まねェな。だが、これ以上そんな亀走りに付き合っちゃいられねェんだ」
この瞬間、私の心は全面的に鬼と化していた…

目の上のコブを叩き落したもつかの間、寺泊港の3kmほど手前で渋滞にハマってしまった。今度は完全に止まってしまい、ほとんど流れない。見通しが利かず、先がどうなっているか全く分からない。
「このまま延々とハマり続けちゃあ、ひとたまりもないな…」
そう判断した私は、Uターンして歩道に逃げ込み、地図で迂回路を検索した。
すぐ目の前にあった県道169号がいけそうだと分かり、坂を上ってゆくと、のどかな田園地帯へと抜け出た。シーサイドは気持ちいいけど、こういう雰囲気もまたいいものだ。
その後、R116の橋を渡り、分水路の土手を走り、「道の駅 国上」に立ち寄ってみた。

なんか美味そうな食いモンあるかな~? と歩き回ると、「地元米で作ったおにぎり」との貼紙が。これを見てハッとさせられた。そうだ! 米だ!! 海産物もあるけど、新潟といえばやっぱり米だ! お米大好き人間の私には、まさに打ってつけではないか。昼食も少なめだったし、迷わず行こう!
…しかし、売り切れだった。時刻がもう16時過ぎとあっては、仕方ないか。やむなく、地元米で作った餅らしきものや、どことなく「おやき」に似ている団子などを買い込み、ベンチに腰掛けそれらをほおばった。

地図を見ながら考える。
もうこんな時間だから、新潟市付近まで行っていたら日が沈んでしまう。何の目的で新潟へ行くつもりだったのか? それは、一面に広がる田園地帯を見るためだった。だが、新潟市にこだわらなくとも、田園はある。そう、今休んでいるこの地域にも、水田は無数に広がっている。
しばしの黙考の後、私は決めた。ここでいい。ここまでで引き返そう。
バイクに跨る前に、ふと思い出してMDプレイヤーを取り出した。ま、どうせダメだろうなと再生ボタンを押すと、何事もなかったかのように再生を始めた。
「…。これって、イジメか!?」今頃になって直りやがって…本来喜ぶべきところを、非常に複雑な気分のままバイクに跨った。

少し走って近くの田園の中へと乗り入れ、あぜ道にバイクを停めた。
北国の春を駆ける ④_b0066153_0545690.jpg
一面に広がる田園の、そのさらに向こうには残雪を冠した山がおぼろげに見える。
美しい。美しい風景だ。うん、これで十分だ。満足した私はカメラをバッグに仕舞い、ステアリングを南へと向けて走り出した。

いったん海岸まで出てから、再び南へ…ところが、またしても渋滞に遭遇。なんだって渋滞ばかりなんだろう? ふと見れば、そこには「工事中 片側通行」との看板が。なるほどねぇ、そりゃ、混むわけだよ。先ほどの渋滞もこれが原因だったようだ。私はさっさとUターンし、またしても迂回路を走り出した。田んぼに映る夕日が、眩しい。
北国の春を駆ける ④_b0066153_0555572.jpg
そうしてまた海岸線に戻った私は、音楽を聴きながらひたすら南へと向かった。やっぱり音楽はいいな。旅の気分を盛り上げてくれるから。
ところが、是が非でも新潟まで! という計画を破棄し、時間に余裕ができて気が緩んだのだろうか、またしても睡魔が頭をもたげてきた。困ったな、これは…
やむなく、柏崎の潮風公園なる所で休憩。砂浜まで歩き、海を眺める。日は傾き、徐々に水平線に近づいてゆく。そんな光景を見ながら、突如思いついた。
「そうだ、あそこから夕日を眺めよう」
私は昼食時に立ち寄った「風の丘」へと急いだ。距離にして数kmだが、日没は刻々と迫る。ようやくたどり着き、丘の向こうを見やると…あった。まだ沈んではいなかった。
ヘルメットを被ったまま急いで写真だけ撮って、あとはただその場に突っ立って、水平線の彼方に沈み行く夕日をいつまでも眺めていた。
北国の春を駆ける ④_b0066153_0561691.jpg

by fch_titans | 2005-05-22 01:00 | ツーリング