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この星が、好きだから― 私は、ティターンズ。


by fch_titans
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第4次北海道上陸作戦④


「…えらく冷えたなぁ」
朝起きて、一番に口を突いて出た言葉はこれだった。寒さのため、深夜にも何度か目が覚めてしまったため、睡眠状態はいま一つだ。
携帯電話を開き、テレビを起動する。頼りない電波を拾いNHKにチューンを合わせると、ほどなく気象情報が。それを見て納得した。今朝の富良野は8℃台、道内で最も冷え込んだらしい。
「なるほどね…って、いや、これ以上冷えたらやってられないぞ。もっとヘビーなやつ(シュラフ)を持ってくるべきだったか!?」9月の北海道って、こんなに厳しいのか?
そしてこの後も気温はあまり上がらないようなので、着込んで走ることにしよう。

パンを食べた後、テントを収納。富良野の遠景を眺めてから、テント跡地に敬礼し、パーキングを後にした。

第4次北海道上陸作戦④_b0066153_20583989.jpg

曇り空の下、富良野の農道を駆ける。R237に合流し北上を続けていると、美瑛あたりでちらちらと陽が差してきた。思わず国道を逸れ寄り道したくなったが、ここにはまた作戦の終盤に立ち寄る予定なので、ここは我慢。今日はあくまで北を目指すのだ。

混むことが分かっている旭川市街を避け、和寒(わっさむ)へ。ここでチェックポイントである「かぼちゃの王国」へ立ち寄り、かぼちゃソフトを食す。店舗の向かい側には、北海道らしいのどかな風景が。

第4次北海道上陸作戦④_b0066153_210357.jpg

R239を経由し、日本海へ。ここからはR232、通称「オロロンライン」を北上する。
と、そろそろ腹が減ってきたので、道の駅で何か食べることに。
しかし、初めに寄った道の駅では、好みとコストの問題でこれだというメニューがなかったため、写真だけ撮って次の道の駅へ向かうこととした。
高台へ登り、海を見渡す。冷たい西風が水面を荒立て、漁港を吹き抜け、手に構えたカメラを微妙に揺らす。

第4次北海道上陸作戦④_b0066153_2103413.jpg

さらに北へ十数キロ走ると、次なる道の駅が見えてきた。
そこにも何台かのバイクがいたが、中でも目を引いたのは荷物を満載したベスパ。
へぇ、こういうバイクで旅する人もいるんだなぁと思いつつ、食堂へ。
腹ごしらえを終え、ヘルメットをかぶって出発しようとしていると、先ほどのベスパを押して歩くライダーが。
(「えっ、女の子!?」)
それも、ベスパには合っているとはいえ、本人だけ見ればとても旅のライダーには見えない服装だった。
「ん〜、やるなぁ」と感心すると同時に、北海道という場所はとかくいろんなタイプの旅人がいるものだと改めて思い知らされた。

軽快な音楽に乗って、オロロンラインを北へと快走。そして、最北端への西のハイライトと言うべき、道道106号へ。
だが、ここでいきなり目にしたのは、覆面パトに拿捕された気の毒な一般車両だった。
やはり、いるのか…
だが、うろたえる必要はない。なに、「当たらなければどうということはない」(某少佐の名言より)。
とにかくバックミラーと道路脇にだけは注意しつつ、それでいて地平線までまっすぐ伸びる道を、喜びを噛みしめながら走った。

こうなると、このまま稚内まで道道106号を走りたくなってくるが、そんな気持ちをぐっと抑え、道道444号へ。時期的に花のほとんど咲いていない様子のサロベツ原野を横切る。これから向かうのは、この原野を見渡せる展望台だ。
そしてたどり着いた展望台から、原野と利尻富士を眺める。(残念ながら上半分は雲に遮られていた)

第4次北海道上陸作戦④_b0066153_2115351.jpg

バイクに戻ると、頭に微かな痛みが。ナニっ、頭痛!? 風邪でもひきかけているのか? 確かに、徹夜走行の疲れも抜けきっていないし、冷たい風にも晒されている。これはいかん、とりあえずバファリンで痛みを抑えよう。

再び道道106号に戻っては距離的にロスが大きいため、内陸部の道道を走り継ぎ稚内のレッドバロンを目指す。今日はここのキャンプ場に宿泊する予定だ。
さすがにマイナーな道道だけあって、ツーリングライダーはおろか地元の車さえもほとんどすれ違わない。
手付かずという言葉がぴったりの丘陵を駆け抜けたら、早くもRBが見えて来た。

ゲートをくぐると、受付の若い店員氏が出迎えてくれた。名古屋出身というその店員氏は、漢字4文字のナンバーを見て懐かしがっていた。
カウンターで申込用紙を記入しようとすると、「RIDE見ました」という合い言葉を発するまでもなく、特製コラボステッカーを戴いた。もう残数が危ういと予想していたステッカーだが、まだそこそこ余裕があったようだ。 
記入する途中で、ふと思いつき、尋ねてみた。併設、というよりこちらがメインとも言うべき宿泊施設は、もう予約でいっぱいですか? と。すると、一部屋だけ用意できるとのことだ。
さきほどからの頭痛もあり、ここはキッチリ疲労を回復しといたほうがいいと考えた私は、予定を変更して部屋を申し込んだ。

鍵を受け取り、さっそく不要な荷物を部屋の床に放り出す。そして、身軽になったサイコを駆り、徐々に高度を下げてゆく夕日を追うようにノシャップ(野寒布)岬へと急行した。
ちょいとのんびりし過ぎたか、陽はどんどん落ちてゆく。稚内市街のゆっくりした車の流れにやきもきしながら急ぐ。間に合うか? 間に合え!
そして、どうにか日没前に、ノシャップ岬にたどり着いた。

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そこには、とにかく大勢の人が押し寄せていた。ずらりと並ぶ車も、ほとんど道外のナンバーばかりだった。
広場の外れの防波堤に腰掛け、空と海の境界を紅く染めながら沈み行く夕日を眺める。
陽が沈むと、どこからとなく拍手が沸き起こった。

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太陽を見送った私は、最北端の温泉で風呂に浸かった後、食材を到達し宿へと戻った。
サロンでは他のライダーたちが談笑しているようだが、私は敢えて自炊を行った。
米を炊き、ラム肉を焼いて、こしょうを振りかけて食す。
肉はやっぱりうまいが、米の煮沸時間を誤ったか、やや焦げめになってしまった。いや。それはまだしも、何だこの自然食材にあるまじき「香しさ」は? もしや、洗面所の水で炊いたのがいけなかったのか?

しかし、原因はおそらく「アレ」だ。
実は米を炊く準備をしようと関連袋を取り出してみたところ、食器用洗剤を入れておいたペットボトルのキャップが破損し、袋がちょっとベタベタになっていた。これが、その下にあった米に染み付いたものと推測される。
だが、その米とてレジ袋を二重にして持ち運んでいるし、その2枚のビニールを貫通してしみ込んだりするものか?
そんなバカなと思いつつ、しかしその後もこの臭いが同様に感じられたところを見ると、やっぱり…!?
当然、味もなーんか不自然。この日はラム肉の味でごまかしつつ食べた。(しかし、それを何度かくり返して行くうちに、少しずつ慣れてきてしまった。慣れとは恐ろしい…)
ちなみに旅の間、特に腹を壊すこともなかったし。一体、何だったのだろう?

食事を終え、ベッドに転がって友人にメールを打っていると、急激に眠気が。結局、そのまま眠りに堕ちてしまった。
                                (つづく)
by fch_titans | 2009-10-13 21:04 | ツーリング